諦観 ~そして伝説へ 序章~
♪ランランララランランラン ランランラララン
ランランランララランランラン ララララランランラン♪
誰もが一度は見たであろうジブリ作品。
これは、「風の谷のナウシカ」の中で流れる『ナウシカレクイエム』だ。
そして俺は世界でも数人と言われる、ナウシカレクイエムをスクリーンではなく、現実世界で聞いた男なのだ。
あれは俺が高校3年も終わりを迎えようとする頃だった・・・
俺とシン、勇者M、そしてもう一人の友人Oの4人組は、中学時代から一緒になって旅行に行っていた。このメンバーが集えば極寒の地も熱帯と化す。
そんな俺たちを人は“レギュラー”と呼んだんだ。
そして高3の冬、晴れて4人とも大学進学が決まり、卒業旅行をかねた最後の祭りを開くことに。
決めた先は、信濃平。そう、スノボだ。(実は中学3年から旅行はずっと冬の山)
みな免許など持っているはずも無く、もちろん自家用車では行けない。
まして貧乏性の俺たちは電車なんて使わない。
俺たちはいつだって深夜バスで弾丸ツアーが信条だから。
今回ももちろん深夜バス。
この時俺は自分がこれから伝説を築き上げることなど微塵も感じていなかった。
毎度のように新宿に集合し、バスに乗り込む俺たち。
その後バスは何事も無く、快調に目的地へと走っていた。
ただ一つ、冷房が効きすぎていたことを除いては。
とは言っても、おなかを丁寧にガードしていれば問題の無いレベル。
当然のように俺は上着を腹にかけて腹痛対策も万全。
横には同じようにシンも腹ガード。
こやつもか。
ふと目線が交わる。
揃いも揃って難儀な胃腸を持ったもんだ。
無言の中にそんな微笑ましい会話が成立する。
やがてサービスエリアに到着し、各自トイレ休憩。
俺は冷えた体を温めるために、HOTミルクティーを飲む。
「お前、そんなん飲んだら腹くだすぞ?」
とシン。
「平気平気。だってさみぃんだもんよ。」
と俺。
この時も俺はその後に待ち受ける伝説を予想だにしていなかった。
HOTミルクティーを飲んでも便意は全く起こらなかった俺は、そのままバスへと乗り込んだ。
時刻は深夜1時を回っている。
今まで友人と話していた周りの乗客も眠りにつきだす。
俺も例外なく眠りについた。そしてシンも。
起きる頃には目的地へと着いていることだろう。
・・・
・・・・
・・・・・
ドコン
!!!
安眠も束の間。
ヤツはこちらが身構える前に襲い掛かってきた。
なんだ、これ、腹が、すげぇ、いてぇ。
それはそれは驚きの痛さだった。
つい今しがたまで心地よい眠りについていたはずなのに何故!?
答えはすぐ横の虚弱兄弟が握っていた。
なんと、今まで微妙にシンよりだった冷房の向きが見事なまでに俺の腹に照準をつけているではないか。
どういうことだ?
けど、今はそんなことはどうでもいい。過ぎたことは仕方が無い。
今は目の前のモンスターに集中しなければ。
ズンドコズンドコ
ヤツのギアが“ドコン”から“ズンドコ”へシフトアップ。
や、やばい。意識が朦朧として。。。
とても一人じゃ耐えられない、仲間が、旅の仲間が必要だ。
「なぁ、シン起きろよ。なぁってば。」
顔面蒼白でシンを揺する俺。
「なんだよ、うるせぇな。静かにしろよ。」
鬱陶しそうに目を開けるシン。
「違うんだよ、そんなんじゃねぇんだって。」
何が違うのか分からない。必死になるとはこういうことを言うのだろう。
「違うって、何がだよ?」
当然のツッコミ。
俺「は、腹がいてぇんだ。それも過去最高に。」
シン「は!?お前マジで??だからミルクティー飲むなって言っただろ。」
俺「あ、あん時は大丈夫だったんだよ。それよりどうしよう?」
シン「どうしようったってお前。もう休憩所ないぞ。」
俺「あぁ~、や、やばい、俺もうダメかも。」
シン「ダメって、お前、ここバスん中だぞ!?」
俺「知ってるよ、でも、ど、どうしたらいいかな?」
シン「そうか、じゃあ、とりあえず運転手さんのとこ行ってこい。」
俺「え? む、無理だよ。シン、お前行ってきてくれよ。」
シン「はぁ!? やだよ。ほら、行ってこい。すぐだよ。」
俺「う、うん。そうだな。分かった」
俺「す、すいませーん」
人は極限に陥ると、えてして不可解な行動を起こすものだ。
シン「ば、バカ! なんでこっから呼ぶんだよ!?」
俺「え?まずかったか?」
シン「当たり前だろ! みんな寝てるんだよ。」
俺「そ、そうだな。 うん、ちょっと楽になったから行ってくる。」
ふらふらとした足取りで運転席へと向かう俺。
なんとか一人の運転手さんに事情を話すと(深夜バスは二人の運転手さんが交代で運転しているのです)、慌ててどこかトイレのありそうな場所を見つけて止めろともう一人に催促してくれた。
この時点でヤツがすでに肛門から顔をのぞかせている。
運転手A「ばかやろう!今トイレありそうなとこあったじゃねぇか!」
運転手B「そんなこと言ったってすぐには止まれねぇよ!」
やめて!私のことで争わないで!!
俺が女の子だったら間違いなくこのセリフがピッタリだったろう。
A「君、大丈夫か?まだ持つか??」
俺「いや、もうそろそろ限界です。」
A「なんだって!? おい、B! どこでもいいから止めてやれ!」
俺「もうトイレとか無くてもいいんで。。」
(お願いします。ウチの子を助けてやってください。)
遠く千葉の実家から聞こえるはずもない母の声。
あぁ、ママン。大好きだよ。
でもね、僕、もう、ダメみたいなんだ。
ごめんね、こんな愚息を許してね。。。
ブリッ・・・・・
俺「あの、運転手さん。もうここでいいです。降ろしてください。」
A「え?? 君。。まさか。。。」
俺「はい、出ちゃいました。」
A「そうか。分かった。 おい、B、ここでいい。止めてあげろ。」
高3にして深夜のバスで脱糞。
俺は涙を呑んで、バスを降りた。
そしてあの歌が長野の大地にこだましたんだ。
ランランララランランラン ランランラララン・・♪
古き言い伝えはまことじゃった。
『その者、蒼き衣をまといて金色の野に降りたたん』
ババさま?ケイさまが行っちゃうよ?
いいんじゃよ、お前もしっかりと見ておくんだよ。
あのお方こそ言い伝えにあった、伝説のその人。
雪の山のウマシカなのじゃから。
しかし伝説はまだ終わらない。
次の記事で、俺が長野の大地で見た光景が蘇る。
そして君は知るだろう。漢の降誕の歴史を。
ケイ
北千住の悲劇 ~Aの視点~
ここからはあの日、授業が終わり何故か有名人のようになり、あちこちのクラスから来客があったAの口から聞いた話である。
あの日、Aは寝坊してしまい、朝のお仕事を怠ってきたという。
はじめこそ何事も無かったAの腹だが、走ってきたせいもあって体は汗だく。
そこにきて電車はガンガンに冷房が。
「腹が急激に冷やされていくのが分かった。」
「腹が冷えることによってうんこが形成されていく様を感じた。」 (A談)
いよいようんこが完全体に。
ここからはうんこが引き起こす波との根競べ。
相場は大体、第3波あたりがレッドゾーン。
しかし、この日のAのソレは第1波から超ド級だったらしい。
「俺を形成する細胞たちがこぞって
TUNAMI! TUNAMI!! と騒いでいたんだ」 (A談)
どうにか第1波を乗り越えたのも束の間。
早くも第二波が到来。
「あの波は尋常じゃなかった。」
「ノースショアの達人もあの波は乗り越えられないと思うよ。」 (A談)
その時こそ笑顔で語ってくれたAだが、車中の心境は想像を絶するものだったに違いない。
この大波を乗り越えるのは不可能と判断したAは止む無く途中下車を決意。
慎重に、緊張してトイレへと向かうA。
と、Aは自分の目を疑った。
眼前に拡がるは大便待ちの長蛇の列。
そう、ここは北千住。
人の往来も激しく、ましてその時は朝の通勤ラッシュ帯。
「あの時俺は悟ったね。」
「ここが俺の死に場所か。 って」 (A談)
人間、悟りは開こうと思ってもなかなか開けるもんじゃない。
しかし、一度悟りを開いた人は、絶対無二の力を手にするという。
「もぅいいや、ここでしちゃえ☆」 (A談)
さすが悟りの境地。
たしかにトイレで用を足したことになるが、
まさか大便器の目の前で脱糞するとは。
ここで俺はどうしても聞きたかった、あの質問を投げかけてみることに。
俺「なんで漏らしたのに学校来たの?」
「あぁ~。なんていうかさ。」
「皆の反応が見たくて。」 (A談)
俺は驚いた。いや、おでれぇた。
まさか単なる好奇心でうんこ漏らしたまま学校来る奴が存在したとは。
いや、きっとこれはAなりのジョークなのだろう。
敗北を喫したままでおめおめと帰るのでは、日本男児の名折れ。
タエガタキヲタエ、シノビガタキヲシノビ・・・
時を超え、Aのもとにも届いたのだろう。
終戦を告げた玉音放送が。
だけどな、Aよ。一つだけ言わせてくれ。
うんこ漏らした奴は、体育の授業でプールに入るな。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだのは俺たちも一緒だ。
ケイ
あの日、Aは寝坊してしまい、朝のお仕事を怠ってきたという。
はじめこそ何事も無かったAの腹だが、走ってきたせいもあって体は汗だく。
そこにきて電車はガンガンに冷房が。
「腹が急激に冷やされていくのが分かった。」
「腹が冷えることによってうんこが形成されていく様を感じた。」 (A談)
いよいようんこが完全体に。
ここからはうんこが引き起こす波との根競べ。
相場は大体、第3波あたりがレッドゾーン。
しかし、この日のAのソレは第1波から超ド級だったらしい。
「俺を形成する細胞たちがこぞって
TUNAMI! TUNAMI!! と騒いでいたんだ」 (A談)
どうにか第1波を乗り越えたのも束の間。
早くも第二波が到来。
「あの波は尋常じゃなかった。」
「ノースショアの達人もあの波は乗り越えられないと思うよ。」 (A談)
その時こそ笑顔で語ってくれたAだが、車中の心境は想像を絶するものだったに違いない。
この大波を乗り越えるのは不可能と判断したAは止む無く途中下車を決意。
慎重に、緊張してトイレへと向かうA。
と、Aは自分の目を疑った。
眼前に拡がるは大便待ちの長蛇の列。
そう、ここは北千住。
人の往来も激しく、ましてその時は朝の通勤ラッシュ帯。
「あの時俺は悟ったね。」
「ここが俺の死に場所か。 って」 (A談)
人間、悟りは開こうと思ってもなかなか開けるもんじゃない。
しかし、一度悟りを開いた人は、絶対無二の力を手にするという。
「もぅいいや、ここでしちゃえ☆」 (A談)
さすが悟りの境地。
たしかにトイレで用を足したことになるが、
まさか大便器の目の前で脱糞するとは。
ここで俺はどうしても聞きたかった、あの質問を投げかけてみることに。
俺「なんで漏らしたのに学校来たの?」
「あぁ~。なんていうかさ。」
「皆の反応が見たくて。」 (A談)
俺は驚いた。いや、おでれぇた。
まさか単なる好奇心でうんこ漏らしたまま学校来る奴が存在したとは。
いや、きっとこれはAなりのジョークなのだろう。
敗北を喫したままでおめおめと帰るのでは、日本男児の名折れ。
タエガタキヲタエ、シノビガタキヲシノビ・・・
時を超え、Aのもとにも届いたのだろう。
終戦を告げた玉音放送が。
だけどな、Aよ。一つだけ言わせてくれ。
うんこ漏らした奴は、体育の授業でプールに入るな。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだのは俺たちも一緒だ。
ケイ
北千住の悲劇 ~俺たちの視点~
シンの伝説からさかのぼる事1年。
あれは俺たちがHの悪夢からようやく解き放たれ、すげー責任を感じることもなく、平和に過ごしていた高校2年の夏のこと。
あいつ(友人A)は突然、土足で俺たちの平和を踏みにじったんだ。
俺は忘れない、あの暑い、熱い一日を。
あの日、俺はいつも通り学校に行き、いつも通りに朝のHRが終わり、本当にいつも通りの一日が始まるはずだった。
そう、Aが来るまでは。
一時間目の始まりを知らせるチャイム。
皆がそれぞれの席へと着き、授業が始まる。この時Aはまだいない。
「あれ~Aは休みか?」
先生が尋ねるも、Aの動向を俺たちが知る由も無く、そのまま授業へ。
と、10分程遅れて教室のドアが開いた。
「遅れてすいません」
「どうしたんだ?遅刻だぞ!」
「……」
何故かAは先生の問いには答えなかった。
が、彼の下の口(=肛門)は自らの罪を語っていた。
明らかに教室が臭いのだ。
そこにいた誰もがAの罪状を把握していた。
こいつはうんこを漏らしている。
しかしそう考えるにはどうしても合点のいかないことがある。
何故こいつは漏らしたまま学校へ来た???
普通に考えてイカれてるとしか言いようがない。
学校へ来るまでにうんこを漏らしたのならば、そのまま踵を返すのが定説。
わざわざ大衆の前に晒される必要性が皆無なのだ。
なんでA来たんだよ?
ってかAだよな?
そうとしか考えられないだろ、だってA来た瞬間臭いもん。
教室がざわめく。
Aはただうつむいていた。
「A、大丈夫か?」
…先生!
その優しさはかえって酷であります!!
と、ついにAがその口を開いた。。
「先生、シャワー浴びてきていいですか?」
!!!
とても形容する言葉が見つからない。
それほどのサード・インパクトをこいつは引き起こした。
先生、トイレ行ってきていいですか?
でも無ければ、
先生、保健室行ってきていいですか?
でも無い。
先生、シャワー浴びてきていいですか?
なのだ。
およそ学校の授業中に発せられるはずの無い『シャワー』という響きに、
教室にいた誰もがあっけに取られた。
そして自信は確信へと変わった。
Aはうんこを漏らしたまま登校。
なんでしょうか、この子は『登校』を『投降』と間違えたんでしょうか。
誰もそんなポツダム宣言を受諾してくれなどと頼んでないというのに。
無条件降伏をしたAの気持ちを量りかねる。
そんな教室中の好奇の眼差しの中、Aは教室を後にした。
俺たちは見たんだ。
涙を堪えるAの瞳を。
去り際のAのこの上ない悲壮な背中を。
不必要に膨らんだズボンを。
その後、シャワーを浴びてきたAのズボンが制服からジャージにモデルチェンジしていたことを、誰一人責める奴はいなかった。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
この時俺は気づくはずも無かったんだ。
すげー責任感じたHも、自ら玉音放送を奏でたAも、
もう次は塗り替えられないと思ったシンの飛翔伝説すらも、
すべてがその先に待ち受ける伝説の序章にすぎなかったということを。
明日、俺とシンと勇者Mともう一人にしか伝わっていない、
至極の伝説が蘇る。
『諦観 ~そして伝説へ~』
明日君は歴史を知る。そして刻の涙を流すだろう。
ケイ
あれは俺たちがHの悪夢からようやく解き放たれ、すげー責任を感じることもなく、平和に過ごしていた高校2年の夏のこと。
あいつ(友人A)は突然、土足で俺たちの平和を踏みにじったんだ。
俺は忘れない、あの暑い、熱い一日を。
あの日、俺はいつも通り学校に行き、いつも通りに朝のHRが終わり、本当にいつも通りの一日が始まるはずだった。
そう、Aが来るまでは。
一時間目の始まりを知らせるチャイム。
皆がそれぞれの席へと着き、授業が始まる。この時Aはまだいない。
「あれ~Aは休みか?」
先生が尋ねるも、Aの動向を俺たちが知る由も無く、そのまま授業へ。
と、10分程遅れて教室のドアが開いた。
「遅れてすいません」
「どうしたんだ?遅刻だぞ!」
「……」
何故かAは先生の問いには答えなかった。
が、彼の下の口(=肛門)は自らの罪を語っていた。
明らかに教室が臭いのだ。
そこにいた誰もがAの罪状を把握していた。
こいつはうんこを漏らしている。
しかしそう考えるにはどうしても合点のいかないことがある。
何故こいつは漏らしたまま学校へ来た???
普通に考えてイカれてるとしか言いようがない。
学校へ来るまでにうんこを漏らしたのならば、そのまま踵を返すのが定説。
わざわざ大衆の前に晒される必要性が皆無なのだ。
なんでA来たんだよ?
ってかAだよな?
そうとしか考えられないだろ、だってA来た瞬間臭いもん。
教室がざわめく。
Aはただうつむいていた。
「A、大丈夫か?」
…先生!
その優しさはかえって酷であります!!
と、ついにAがその口を開いた。。
「先生、シャワー浴びてきていいですか?」
!!!
とても形容する言葉が見つからない。
それほどのサード・インパクトをこいつは引き起こした。
先生、トイレ行ってきていいですか?
でも無ければ、
先生、保健室行ってきていいですか?
でも無い。
先生、シャワー浴びてきていいですか?
なのだ。
およそ学校の授業中に発せられるはずの無い『シャワー』という響きに、
教室にいた誰もがあっけに取られた。
そして自信は確信へと変わった。
Aはうんこを漏らしたまま登校。
なんでしょうか、この子は『登校』を『投降』と間違えたんでしょうか。
誰もそんなポツダム宣言を受諾してくれなどと頼んでないというのに。
無条件降伏をしたAの気持ちを量りかねる。
そんな教室中の好奇の眼差しの中、Aは教室を後にした。
俺たちは見たんだ。
涙を堪えるAの瞳を。
去り際のAのこの上ない悲壮な背中を。
不必要に膨らんだズボンを。
その後、シャワーを浴びてきたAのズボンが制服からジャージにモデルチェンジしていたことを、誰一人責める奴はいなかった。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
この時俺は気づくはずも無かったんだ。
すげー責任感じたHも、自ら玉音放送を奏でたAも、
もう次は塗り替えられないと思ったシンの飛翔伝説すらも、
すべてがその先に待ち受ける伝説の序章にすぎなかったということを。
明日、俺とシンと勇者Mともう一人にしか伝わっていない、
至極の伝説が蘇る。
『諦観 ~そして伝説へ~』
明日君は歴史を知る。そして刻の涙を流すだろう。
ケイ
Stair way to heaven
この大空に翼を広げ飛んでいきたいよ。悲しみのない自由な空へ、翼はためかせ、行きたい…
季節はまさに受験シーズン真っ只中。テレビでは受験生の姿が数多く映し出されている。
この時期になると、毎年オレは思い出すんだ。
高3の冬、受験を間近に控えたオレはケイと一緒に予備校の冬季講習に通っていた。
その日の授業は、代○木ゼミナールでも常にトップ人気である西きょ○じという男の英語「はばたき加速度V」、その年の最終授業だった。
オレ達は人気講師信者でもなんでもなかったのだが、授業を選ぶ時に、人気講師ならいいんじゃね?というダメな生徒のお手本のような生徒であった。そのため授業に対する意欲は薄く、しょっちゅうゲーセンでさぼっていた。しかし、この日は最終授業ということもあり、今までさぼってたもとを取るという、非常に意味の無い発想から「最終日ぐらい一番前で受けんべ?」という言動、そして行動へと移ったのである。
そして、生涯もっとも長い90分が始まった。
正直、着席して10分ぐらいで腹の異変には気づいていた。
普段さぼってばかりいた授業、しかもその最終授業で最前列という状況に置かれたオレの腹は、普段とは違う空気を敏感に感じ取ったのだろう。
20分経過。早くも額に脂汗が滲み始めた。すでに界王拳は発動させている。しかしそれは悲劇の序章でしかなかった。
40分経過。ペンを握る手が汗ですべる。だが、今まで数々の激闘を演じてきたオレとヤツ(腹痛)の間には奇妙な友情が生まれつつあった。
「お前の耐久力にゃ、いつも驚かされるぜ…。」戦いの後、そう言ってきたヤツに、オレは握手を差し伸べたものだった。
ヤツはいつもオレを苦しめてきたが、小2の惨劇以来、常にギリギリのところでオレに勝ちを譲ってきた。
オレが死んだらヤツも死ぬ。そこに「共存共栄」という図式が成立していたのである。
45分。おり返し地点に入った。その瞬間、少し楽になった気がした。残り45分、どうにか乗りきれるかもしれない。
60分。再びヤツが出力を上げる。オレは界王拳2倍を発動した。肛門に力がこもる。腋がべたついてきた。
70分。あと20分!あと20分で解放される!
そう思った矢先である。教室の熱気による蒸し暑さを鎮める為に「エアコン」という原子爆弾が投下された。
汗で濡れた背中に冷気がふきつける。
3倍!3倍だすよママ!
面白いぐらいにお腹が冷えるよママ!
火に油。腹痛に冷房。
残りあと10分。こうなったらもう根競べである。オレとヤツ、どっちが先に折れるかの世界だ。
およそ人間とは思えない表情を浮かべるオレ。教室の中の誰よりも、オレはマジだった。
ついに相方がオレの異変に気づいた。
何かオレに言っていた気がするがこっちはそれどころじゃない。
オレは気を紛らわせるため、体のあちこちをつねりまくった。
ついに授業終了予定時間になった。解放を確信したその時、講師の西が口を開いた。
「みんな最後に話をしてもいいか?15分ぐらい。」
よ、よ、よ
サドンデス決定!
そして4倍発動!
リミッターはレッドゾーンを振りきった。脳下垂体からエンドルフィンが大量に分泌する。
西が最後のメッセージを生徒に送っている。中には泣いてるヤツもいた。
オレもその一人だ。
西「みんな最後までよくがんばった。」
がんばったよ!ほんとにがんばった!だから早く終われ!ぶっ殺すぞ!
西「助走は充分だ。もう、君達は、はばたけるんだよ。」
先生、はばたいてもよかですか?
は、は、はば、た、い
プリッ…
「地上の星」
唄、中島みゆき
風の中の昴 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく
草原のペガサス 街角のヴィーナス みんな何処へ行った 見守られることもなく
地上にある星を誰も覚えていない 人は空ばかりみてる
つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を
つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう
地上の星。ここに在り。
シン
季節はまさに受験シーズン真っ只中。テレビでは受験生の姿が数多く映し出されている。
この時期になると、毎年オレは思い出すんだ。
あの日の悪夢を。
高3の冬、受験を間近に控えたオレはケイと一緒に予備校の冬季講習に通っていた。
その日の授業は、代○木ゼミナールでも常にトップ人気である西きょ○じという男の英語「はばたき加速度V」、その年の最終授業だった。
オレ達は人気講師信者でもなんでもなかったのだが、授業を選ぶ時に、人気講師ならいいんじゃね?というダメな生徒のお手本のような生徒であった。そのため授業に対する意欲は薄く、しょっちゅうゲーセンでさぼっていた。しかし、この日は最終授業ということもあり、今までさぼってたもとを取るという、非常に意味の無い発想から「最終日ぐらい一番前で受けんべ?」という言動、そして行動へと移ったのである。
そして、生涯もっとも長い90分が始まった。
正直、着席して10分ぐらいで腹の異変には気づいていた。
普段さぼってばかりいた授業、しかもその最終授業で最前列という状況に置かれたオレの腹は、普段とは違う空気を敏感に感じ取ったのだろう。
20分経過。早くも額に脂汗が滲み始めた。すでに界王拳は発動させている。しかしそれは悲劇の序章でしかなかった。
40分経過。ペンを握る手が汗ですべる。だが、今まで数々の激闘を演じてきたオレとヤツ(腹痛)の間には奇妙な友情が生まれつつあった。
「お前の耐久力にゃ、いつも驚かされるぜ…。」戦いの後、そう言ってきたヤツに、オレは握手を差し伸べたものだった。
ヤツはいつもオレを苦しめてきたが、小2の惨劇以来、常にギリギリのところでオレに勝ちを譲ってきた。
オレが死んだらヤツも死ぬ。そこに「共存共栄」という図式が成立していたのである。
45分。おり返し地点に入った。その瞬間、少し楽になった気がした。残り45分、どうにか乗りきれるかもしれない。
60分。再びヤツが出力を上げる。オレは界王拳2倍を発動した。肛門に力がこもる。腋がべたついてきた。
70分。あと20分!あと20分で解放される!
そう思った矢先である。教室の熱気による蒸し暑さを鎮める為に「エアコン」という原子爆弾が投下された。
汗で濡れた背中に冷気がふきつける。
3倍!3倍だすよママ!
面白いぐらいにお腹が冷えるよママ!
火に油。腹痛に冷房。
残りあと10分。こうなったらもう根競べである。オレとヤツ、どっちが先に折れるかの世界だ。
およそ人間とは思えない表情を浮かべるオレ。教室の中の誰よりも、オレはマジだった。
ついに相方がオレの異変に気づいた。
何かオレに言っていた気がするがこっちはそれどころじゃない。
オレは気を紛らわせるため、体のあちこちをつねりまくった。
ついに授業終了予定時間になった。解放を確信したその時、講師の西が口を開いた。
「みんな最後に話をしてもいいか?15分ぐらい。」
よ、よ、よ
サドンデス決定!
そして4倍発動!
リミッターはレッドゾーンを振りきった。脳下垂体からエンドルフィンが大量に分泌する。
西が最後のメッセージを生徒に送っている。中には泣いてるヤツもいた。
オレもその一人だ。
西「みんな最後までよくがんばった。」
がんばったよ!ほんとにがんばった!だから早く終われ!ぶっ殺すぞ!
西「助走は充分だ。もう、君達は、はばたけるんだよ。」
先生、はばたいてもよかですか?
は、は、はば、た、い
プリッ…
唄、中島みゆき
風の中の昴 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく
草原のペガサス 街角のヴィーナス みんな何処へ行った 見守られることもなく
地上にある星を誰も覚えていない 人は空ばかりみてる
つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を
つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう
地上の星。ここに在り。
シン
ドアを開けると、そこは一面のクソ景色でした。
矛盾。
物事の辻褄が合わない様子のこと。今日はそんな矛盾の話。そしてもちろん、うんこの話だ。
時は1997年。生まれてこの方、常に腹の痛みととなり合わせで生きてきたオレも中学3年生になっていた。オレはバスケ部に所属しており、その年の冬、オレ達バスケ部は高等部(うちの学校は中高一貫校であった)と合同で合宿を行い、学校の寮に1週間泊り込んだ。
練習は非常に辛く、夜10時にはみんな眠りに落ちていた。忘れもしない、それは4日目の朝のことである。
起床時間は午前6時。その日の朝、オレは同じ部屋の同級生に起こされた。
「おい!早く起きろ!大変なことになってるぞ!」
何事だと思い、慌ててオレは部屋からでた。すると廊下には同学年のやつらのほぼ全員が集まっていた。
オレ「ど、どしたの?」
S「みろよ。これ。」
するとそこには、オレ達のむかいの部屋からトイレへと延びる一筋の、誰かがもらしたうんこの残骸。
忌まわしい記憶がフラッシュバックする。
オレ「オオオオオオレじゃねーよ!!!!」
ホントにオレじゃなかったのだが、何故か肛門がうずいた。心の傷は癒えちゃいない。
A「わかってるよ。でも先輩がオレ達で掃除しろってさ。」
じゃんけんで掃除するヤツを3人決める。もちろん負けた。まさにくそったれめ。
掃除しながらオレは気づいた。
…一人足りない。
オレ「ところで…Hがいないけど。」
一瞬の沈黙の後、誰かが口を開いた。
「H、あの部屋だよな…」
ゴクリ…
その時、Hが部屋から出てきた。
H「おはよう。」
平静を装っているが、表情は引きつっていた。
コイツだ…!!! Hを除く全員が確信した。明らかに臭う!本当に臭う!
じゃんけんで負けた3人は、無言で掃除を続けていた。すると、再びHが口を開いた。
H「シン、拭き忘れてるぞ。そっちにもあるぞ。」
ムカッ
オレ「お、お前がやったんじゃねーのか?」
H「オ、オレじゃねーよ!」
H「でも…」
H「すげー責任感じるよ。」
(゚Д゚ )
もう、誰一人口を開くことはなかった。その日、Hは練習に参加しなかった。
彼の名言は、その年のうちの学校の流行語大賞をぶっちぎりの一位で受賞した。
この事件の真相を知らない者までもが、「すげー責任感じるよ。」を使っていた。
合宿の後、Hはバスケ部に戻ってきた。
そして、オレ達は今まで通り、コートの上を走っていた。
次回、ついに腹痛は再びオレに牙を剥く。
シン
おもひでボロボロ~悪しき風習の影~
世界には実に様々な風習がある。
俺も22年という短い歳月の中で、数多くの日本的文化・風習に触れてきた。
そしてその中でも特に俺を苦しめた風習がある。
そう、
卒業し10年以上経った今でも、何故あのような習慣があるのか不思議でならない。
「うんこ」も生活習慣病である。
こんなぶっとんだテーゼがまかり通るなら納得出来ないわけでもない。
けれど、誰がどう考えたって「うんこ」は自然の営みだろう。
なのに“小学校”という特殊空間は、それを断固受け付けない。
仮に人に見つからないように個室に潜入出来たとしても、
「おーい、誰かうんこしてるぞ!!」
「マジで!? どこだどこだ!!」
なんて、ブルース・ウィルスも真っ青の超スペクタクルな展開が待ち受ける。
これぞまさしく『大ハード』
これから話すお話は、そんな悪しき風習に立ち向かう術も無く屈した男の子の物語。
あれは小学校4年生の頃だったろうか。
親の転勤に伴い、俺も転校することになった。
3学期からの転入ということで、元々人見知りする俺はいつになく緊張してたんです。
「早く友達出来るといいな。」
「上手くみんなと馴染めるかな。」
そんな思いを抱えていれば、幼い子供が朝のお通じを忘れるのも無理がない。
その日の朝食はスクランブルエッグ(マヨネーズ添え)
これは今でも俺が、というより俺の胃腸が苦手とするメニューだ。
それでも時は待ってはくれない。
一抹どころかジュウシマツくらいの不安を抱えたまま教室へと案内される。
「はい、みんな。今日から新しいお友達が加わります。これから自己紹介してもらうから注目~!!」
緊張MAX
同時に俺の肛門のリミッターが外れるのを感じた、その時
プスッ・・
やったか!?
俺はひどく焦った。しかしどうやら屁だけだ。実は出ていない。
だけどこれは使えるぞ。
「はじめまして、ケイです。よろしくおねがいします。」
屁でうんこをチラシながら、どうにか挨拶を終え、席へと向かう。
腹はとうに臨界点を超えている。
プルプルとした足取りを見て、隣の席の子が
「そんな緊張することねぇだろ~。俺○○ってんだ、よろしくな!」
そんな優しさはいらない。
頼むからほっといてくれ。そしてうんこをさせてくれ。
言いたくても言えない俺。
言ったら新しい小学校での生活が水に流れる。
流したいのは俺のうんこ。
そんな錯乱状態に陥りつつも次々と周りの子がさかんに話し掛けてくれることで、これからの小学校生活に安堵を覚える。
だが、その安堵が俺を狂わせた。
ブスッ・・
半濁音が濁音に変わった。ただそれだけのはずだった。
だけど俺はすぐにコトの変化の重大さに気付いたんだ。
「うんこ」出てる・・・
禁断の果実に手を出したアダムとイブは人間界へと落とされた。
禁断の果実を捻り出した俺は、一体どこへ落とされるのだろう。
(なんであの時気を緩めてしまったんだ…!)
(うんこしたら仲良くなれるものも台無しだって分かってたはずなのに!!)
(あぁ、俺のバカ!)
不安と、後悔と、自責の念が俺の頭を駆け巡る。
と、一人の男子が口を開いた。
「なんか臭くない??」
周りの子も、
「ほんとだ!なんか臭い!!」
と騒ぎ出す。
終わった・・・
大げさでなくそう思った。
そして努めて冷静に自分の採れる余地を考えた。
①さも他人事のように騒ぎに混じる
②無言で席を立ちトイレに向かう。
③高らかと自分がやったと宣言する。
①は自分の処遇とバレた時のリスクが高すぎる。②は論外。
俺の取りうる余地は③しかなかった。
言おう・・
武士は戦いの最中敵に背を向けて斬られるを恥とした。
幼き日本男児として誇りある死を選ぼう。
決意は固まった。
そして口を開いた。
「ごめんごめん、なんかさっきからずっと屁がとまんねぇんだ!」
ちっちゃな嘘ミーツケタ。
どうしても死んだままの残りの2年が幼子には重すぎた。
しかし、無駄に明るく言ったのが功を奏したのか。
みんないっぺんも疑うでもなく、
「なんだよ~、そうだったのかよ。」
「屁が止まらないって面白い奴だな~!」
転校初日にして『うんこマン』の汚名を着る惨事は逃れた。
けれど人として、誇り高き武士の末裔として、
大切なかけらをどこかに落としたあの日。
分かっているのは、その横に茶色いかけらも落ちているという事実。
いつか探しに旅に出よう。
自分探しの旅に出よう。
バキュームカーに乗って。
ケイ
俺も22年という短い歳月の中で、数多くの日本的文化・風習に触れてきた。
そしてその中でも特に俺を苦しめた風習がある。
そう、
小学校でうんこしちゃいけない
卒業し10年以上経った今でも、何故あのような習慣があるのか不思議でならない。
「うんこ」も生活習慣病である。
こんなぶっとんだテーゼがまかり通るなら納得出来ないわけでもない。
けれど、誰がどう考えたって「うんこ」は自然の営みだろう。
なのに“小学校”という特殊空間は、それを断固受け付けない。
仮に人に見つからないように個室に潜入出来たとしても、
「おーい、誰かうんこしてるぞ!!」
「マジで!? どこだどこだ!!」
なんて、ブルース・ウィルスも真っ青の超スペクタクルな展開が待ち受ける。
これぞまさしく『大ハード』
これから話すお話は、そんな悪しき風習に立ち向かう術も無く屈した男の子の物語。
あれは小学校4年生の頃だったろうか。
親の転勤に伴い、俺も転校することになった。
3学期からの転入ということで、元々人見知りする俺はいつになく緊張してたんです。
「早く友達出来るといいな。」
「上手くみんなと馴染めるかな。」
そんな思いを抱えていれば、幼い子供が朝のお通じを忘れるのも無理がない。
その日の朝食はスクランブルエッグ(マヨネーズ添え)
これは今でも俺が、というより俺の胃腸が苦手とするメニューだ。
それでも時は待ってはくれない。
一抹どころかジュウシマツくらいの不安を抱えたまま教室へと案内される。
「はい、みんな。今日から新しいお友達が加わります。これから自己紹介してもらうから注目~!!」
緊張MAX
同時に俺の肛門のリミッターが外れるのを感じた、その時
プスッ・・
やったか!?
俺はひどく焦った。しかしどうやら屁だけだ。実は出ていない。
だけどこれは使えるぞ。
「はじめまして、ケイです。よろしくおねがいします。」
屁でうんこをチラシながら、どうにか挨拶を終え、席へと向かう。
腹はとうに臨界点を超えている。
プルプルとした足取りを見て、隣の席の子が
「そんな緊張することねぇだろ~。俺○○ってんだ、よろしくな!」
そんな優しさはいらない。
頼むからほっといてくれ。そしてうんこをさせてくれ。
言いたくても言えない俺。
言ったら新しい小学校での生活が水に流れる。
流したいのは俺のうんこ。
そんな錯乱状態に陥りつつも次々と周りの子がさかんに話し掛けてくれることで、これからの小学校生活に安堵を覚える。
だが、その安堵が俺を狂わせた。
ブスッ・・
半濁音が濁音に変わった。ただそれだけのはずだった。
だけど俺はすぐにコトの変化の重大さに気付いたんだ。
「うんこ」出てる・・・
禁断の果実に手を出したアダムとイブは人間界へと落とされた。
禁断の果実を捻り出した俺は、一体どこへ落とされるのだろう。
(なんであの時気を緩めてしまったんだ…!)
(うんこしたら仲良くなれるものも台無しだって分かってたはずなのに!!)
(あぁ、俺のバカ!)
不安と、後悔と、自責の念が俺の頭を駆け巡る。
と、一人の男子が口を開いた。
「なんか臭くない??」
周りの子も、
「ほんとだ!なんか臭い!!」
と騒ぎ出す。
終わった・・・
大げさでなくそう思った。
そして努めて冷静に自分の採れる余地を考えた。
①さも他人事のように騒ぎに混じる
②無言で席を立ちトイレに向かう。
③高らかと自分がやったと宣言する。
①は自分の処遇とバレた時のリスクが高すぎる。②は論外。
俺の取りうる余地は③しかなかった。
言おう・・
武士は戦いの最中敵に背を向けて斬られるを恥とした。
幼き日本男児として誇りある死を選ぼう。
決意は固まった。
そして口を開いた。
「ごめんごめん、なんかさっきからずっと屁がとまんねぇんだ!」
ちっちゃな嘘ミーツケタ。
どうしても死んだままの残りの2年が幼子には重すぎた。
しかし、無駄に明るく言ったのが功を奏したのか。
みんないっぺんも疑うでもなく、
「なんだよ~、そうだったのかよ。」
「屁が止まらないって面白い奴だな~!」
転校初日にして『うんこマン』の汚名を着る惨事は逃れた。
けれど人として、誇り高き武士の末裔として、
大切なかけらをどこかに落としたあの日。
分かっているのは、その横に茶色いかけらも落ちているという事実。
いつか探しに旅に出よう。
自分探しの旅に出よう。
バキュームカーに乗って。
ケイ
クラリネットでもらしちゃった
Q.「あなたにとって一番つらい痛みはなんですか?」
オレの人生はまさに腹痛との戦いの歴史と行っても過言ではない。幼少の頃より、この顔のように繊細かつデリケートだったオレの腹は、ことあるごとに痛み、オレを苦しめてきた。
小学校に入る前までは、家族でどこかに外出する際は、出発前に必ず3回は用を足した。そしていざ出発となると、肛門は再び疼き出し、オレは父に「ねえおとうさん…ぼくのおなかだいじょうぶかなぁ。なんかまだうんちでそうな気がするよ。おしりのあなから3センチぐらいのところにある気がする。」と訪ねた。すると父は「1時間で1センチだから3時間はもつ。」と、今思えばこの上なくいい加減な理論を息子に説いたものだった。アノヤロウ。その後きっちり3時間後に、オレが用を足したことは言うまでもない。
月日は流れ、オレは小学2年生になった。腹は相変わらず弱かったが楽しく学校生活を過ごしていた。そんなある日、給食はオレの大好物であるカレー。
小学生のクラスでの地位はおかわりの量で決まると信じて疑わなかったオレは、ここぞとばかりに食いまくった。
しかし、調子に乗りまくったツケは、想像を絶するでかさでいたいけな少年を襲ったのである。
5時間目も終わりにさしかかった時、ヤツ(腹痛)は突然やってきた。
「ぐ、い、痛ぇ…でも、まだ界王拳三倍で耐えれr
ヤツはいきなり出力をあげた。(注:イメージ図)
よ、よ、よ…
必死に耐える男(注:イメージ図)
必死の反撃(注:イメージ図)
4倍を使うしかなかった。思わず叫びそうになるのを必死でこらえる。
ヤツのギャリック砲に対抗するには界王拳4倍を使うしかなかったのである。
無理な技を使い、満身創痍になりながらも5時間目を切り抜けたオレを待っていたのは「帰りの会」である。
しかし、ヤツは出力を弱めるどころかさらに回転をあげ続ける。
「も、もうだめかも…。」教室の右隅、後ろのドアの目の前の席で虚ろな目を宙に泳がすオレ。
そして帰りの会のクライマックス、帰りの歌がはじまった。
パパからもらったクラーリネット…
瀕死の状態にも関わらず、口ずさんでしまうのは小学生の哀しい性。
どうしよう?どうしよう?
普段は大好きなこの歌が、その時は葬送曲に聞こえていた。
パッキャマラドパッキャマラドパオパオパッパッパッパ!パッキャマラド…
終わる!もうすぐ便器に逢える!と思った次の瞬間
すさまじい炸裂音と共に、オレの半ズボンは規格外の大きさに膨らんだ。
横を向くと、となりの席の女の子と目があった。半笑いで、オレは言った。
「出ちゃった…。」
その瞬間、教室にいつもの言葉が響き渡った。
先生さようなら。みなさんさようなら…。
オレは忘れない。泣きながら教室を飛び出したあの日のことを。
オレは忘れない。走り去った階段に落としたらしい、液状化したオレのかけらを見たクラスメイトの
「おーい!カレー落ちてるぞ!今日の給食当番だれだよー!」という言葉を。
そして、給食当番も、それを落としたのもオレだということを。
シン
「腹痛。(即答)」
オレの人生はまさに腹痛との戦いの歴史と行っても過言ではない。幼少の頃より、この顔のように繊細かつデリケートだったオレの腹は、ことあるごとに痛み、オレを苦しめてきた。
小学校に入る前までは、家族でどこかに外出する際は、出発前に必ず3回は用を足した。そしていざ出発となると、肛門は再び疼き出し、オレは父に「ねえおとうさん…ぼくのおなかだいじょうぶかなぁ。なんかまだうんちでそうな気がするよ。おしりのあなから3センチぐらいのところにある気がする。」と訪ねた。すると父は「1時間で1センチだから3時間はもつ。」と、今思えばこの上なくいい加減な理論を息子に説いたものだった。アノヤロウ。その後きっちり3時間後に、オレが用を足したことは言うまでもない。
月日は流れ、オレは小学2年生になった。腹は相変わらず弱かったが楽しく学校生活を過ごしていた。そんなある日、給食はオレの大好物であるカレー。
小学生のクラスでの地位はおかわりの量で決まると信じて疑わなかったオレは、ここぞとばかりに食いまくった。
しかし、調子に乗りまくったツケは、想像を絶するでかさでいたいけな少年を襲ったのである。
5時間目も終わりにさしかかった時、ヤツ(腹痛)は突然やってきた。
「ぐ、い、痛ぇ…でも、まだ界王拳三倍で耐えれr
ヤツはいきなり出力をあげた。(注:イメージ図)
よ、よ、よ…
必死に耐える男(注:イメージ図)
必死の反撃(注:イメージ図)
4倍を使うしかなかった。思わず叫びそうになるのを必死でこらえる。
ヤツのギャリック砲に対抗するには界王拳4倍を使うしかなかったのである。
無理な技を使い、満身創痍になりながらも5時間目を切り抜けたオレを待っていたのは「帰りの会」である。
しかし、ヤツは出力を弱めるどころかさらに回転をあげ続ける。
「も、もうだめかも…。」教室の右隅、後ろのドアの目の前の席で虚ろな目を宙に泳がすオレ。
そして帰りの会のクライマックス、帰りの歌がはじまった。
曲目「クラリネットをこわしちゃった」
パパからもらったクラーリネット…
瀕死の状態にも関わらず、口ずさんでしまうのは小学生の哀しい性。
どうしよう?どうしよう?
ほんとにどうしよう。
普段は大好きなこの歌が、その時は葬送曲に聞こえていた。
パッキャマラドパッキャマラドパオパオパッパッパッパ!パッキャマラド…
終わる!もうすぐ便器に逢える!と思った次の瞬間
オッパ!
ブリッ!!!
すさまじい炸裂音と共に、オレの半ズボンは規格外の大きさに膨らんだ。
横を向くと、となりの席の女の子と目があった。半笑いで、オレは言った。
「出ちゃった…。」
その瞬間、教室にいつもの言葉が響き渡った。
先生さようなら。みなさんさようなら…。
オレは忘れない。泣きながら教室を飛び出したあの日のことを。
オレは忘れない。走り去った階段に落としたらしい、液状化したオレのかけらを見たクラスメイトの
「おーい!カレー落ちてるぞ!今日の給食当番だれだよー!」という言葉を。
そして、給食当番も、それを落としたのもオレだということを。
シン